きら人 vol. 6 村上明日美 さん

エール今月のきら人

種を蒔いてるときが一番好きかな。だって希望と未来が見えるから。

 お仕事は?と聞かれたら、「農業をやっています」と答える独身女性が、だんだん増えたような気がします。だけど、村上明日美さんのように「一人で農業をやっています」と答える女性は、ちょっと少ないかもしれません。

 山口県に生まれ、大学は東京農業大学を卒業したものの、東京で食品の卸売企業に勤務するOLだった明日美さん。農業の道に進むきっかけとなったのは、勤め先の関連会社が別府の宿を運営する際、そこで提供する野菜を作る農業従事者を探しているという話を聞いた時でした。  「思わず私がやりたい!って(笑)。農家出身でもない私が新規就農をやるのは、とても難しいことなので、これはいいチャンスだと思ったんです」

 手を挙げたことでOLから農業従事者へ、東京から別府へと、明日美さんの暮らしぶりは大きく変化しました。農大出身者とは言え、専門は農業経済だったため、実践農業の経験はゼロ。農家を訪ねたり、農園に出かけたりして2週間の研修を終えた後、早くも実践に入ったそう。地域の方に借りた農地は 4反。別府湾を見下ろす見晴らしのいい高台の段々畑が、明日美さんの新しい職場となりました。最初に植えた野菜はラディッシュ。

「家庭菜園でも作れそうだから簡単ですぐにできると思っていたけど、全部虫にやられてしまい、とても商品にならなかったです」と当時を思い出して笑う明日美さん。  虫だけでなく、天候、気温、季節の変化も野菜に大きく影響してきます。「最初の年は日照り、翌年は長雨、去年の反省点が全く役に立たないんです」

 さらに、農機具の使い方、農薬、化学肥料の上手な使い方、収穫して出荷するまでに掛る手間など、一つひとつの「初めて」を体で覚え、地域のお年寄りたちや農家の先輩たちに教えられてきた日々。2年前の明日美さんには考えられない経験です。

 「OL時代は朝起きて地下鉄に乗り、そこからビルに入り、夜遅くまで働いてバタンキュー。それが今はお陽様と共に目覚め、お陽様の下で働く生活になって、初めて、ああ、私は東京ではお陽様を浴びていなかったんだって気付いたんです」

 明るい笑顔でそう話す彼女は、2年目にして自分の農園を作ることに向かい始めました。今まで、収穫する野菜は宿を運営する会社が買い取ってくれていましたが、その会社からも独立。栽培、収穫した野菜を県内外に出荷するまですべて一人でこなしていましたが、これからは販路も自分で開拓していかなければなりません。

 「今は助成金に助けられていますけど、早く自立してもっと規模は大きくしたい。女性主体の農業もできたらいいな。今は大変な作業ですが、種を蒔いていると、希望と未来が見えてくるんです」

 農園の名前は「あすみ農園」。大分初の女性だけの農園誕生は、夢ではなさそうです。

農業家 / 村上明日美さん
農業家 / 村上明日美さん

a太陽と風と雨の下で野菜を育てる彼女は実に楽しそう。「農業をやっている すべての先人たちに感謝、尊敬ですね」 b.c.美しい湧水は野菜の洗い水に。 d.両手いっぱいのペパーミントからは春の香りがいっぱい e.盛り土に可愛い大根がお目見え。来年に向けてハウスを計画も進んでいる。 f.黒人参、イタリアンパセリ、ブロンズフェンネル…明日美さんが育てた野菜は、東京のレストラン、八百屋、岡山の漬物屋、築地の卸売市場などに出荷されている。


きら人vol6 農業家/村上明日美さん
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